Apple用語
2020年11月、AppleはMac用Appleシリコンとして初のM1チップをMacBookAir、MacBookPro、Mac miniの3機種に搭載して発売しました。
Appleシリコン、Appleシリコンって皆が言うけど、そもそもAppleシリコンって何のことですか?
なんか知ってて当たり前って感じで言葉が飛び交ってて、いまさら聞けないんですけど・・
Appleの中ではもう基本中の基本用語となっているこのAppleシリコンについて、今回は説明していきたいと思います。
「文系女子でもわかる」Appleシリコンについてまとめていきたいと思います。
コンピューターやスマホなどを動かす心臓部
Appleシリコンとは、Appleが設計し自社製品(今まではMacをのぞく製品に使われいました。iPhoneやiPad、AirPods、AppleWatchなど)を動かす心臓部にあたるチップをさします。Appleが自身で作っている(製造は外注してます)というところが大きいポイントです。
このチップの性能が製品性能の要といえるもっとも重要な部品といえます。
そもそもコンピューターの中身って
Appleシリコンについて詳しく説明していく前に、そもそもコンピューターの中ってどんなふうになっているのかを説明しますね。
今はいろいろなコンピューターが出ていて、パーツの仕組みや技術が進化して多岐にわたっているので、まだわかりやすかった少し昔のパソコンを例にお話しします。
大きな方がわかりやすいと思うので組み立てパソコンの中身を例に説明したいと思います。
パソコンのケースを開いたり、実際に自作でパソコンを作ったことがある人は想像しやすいと思いますが。
パソコンは様々な小さな部品、専用の仕事をまかされた(システム)と呼ばれる部品同士が連携して情報を渡しながら仕事をしています。
その一番根底になる部品(パーツ)がマザーボードと呼ばれる「基板」です。
このマザーボードが全ての大本になるのですが、これにCPU(演算処理をします)とかGPU(グラフィック・画像とか映像とか処理する部品)、サウンドカード(音をだす部品)、メモリー(一時記憶とかを処理する部品)などのシステムパーツを挿していきます。
それからパソコンを動かすための電源、CPUなどからはかなりの熱がでるのでそれを冷却させるためのファンとか、データーを保存する場所(ストレージ)としてのHDD、CDやDVDなどを読み込ませる各種ドライブもつなげていきます。
外付けの機械などをつなげるための端子はマザーボード自身についていたり、GPUやサウンドカードについていたりします。
この辺りの作業はただただ黙々と組み立てていくので、プラモデルを作っていくような感じと大差ありません。細かいパーツやネジなども多いので、なくさないように作業していきます。また静電気なども大敵なので触る際も注意が必要です。各パーツにはピンも多いので、ピンを折ったり曲げたりしないように慎重に正しく取り付けなければいけません。
必要なパーツを設置したら、ディスプレイやらマウスやらキーボードなどをつなげて外見は完成。
その後コンピュータを動かすためのOS(基幹ソフト)をインストールします。
OSが入ったら、このコンピュータに必要なソフトウェア(最近はアプリといいますね)や周辺機器が問題なくつかえるようにドライバーなどを入れてうまく動作すればパソコンの完成です。
昔はそういったソフトウェアやドライバがCDなどで提供されていたので、ネットとかにつなげるのは、それらすべてが終わってからでした。
この部分だけでもPC関連の専門用語のオンパレードではてなマークの方も多いと思いますが、プラモデルみたいに一個一個のパーツが組み合わさって動いてると思ってくださいね。
一個でも不具合があればコンピューターはまともに動きません。
昔はこれらの一個一個のパーツが大きかったです。それぞれ有名メーカーがあって技術を競っていました。それらのバラバラのパーツをマザーボードに挿しこんでいって1つにしていたんです。バラバラのメーカーで作って載せていたので、「相性問題」とか何が原因かわからないトラブルもあり、素人には手を出しにくい分野でしたし、高性能パーツは熱も出すし、パーツそのものも大きいということで、必然的に高性能パソコンはデスクトップのような大きいパソコンになるといった状況でした。
ですが、人間の手で組み立てれるそんなサイズだったので、機械いじりが好きな人は出来たパソコンを操作して何かするより、パソコンそのものを組みたてたり交換したりする「作業」が好きという人もいますね。
だから、昔のMacとかは色々いじれて好きだった・・って売り場でいうお客さんがいるんですね。
今のMacはメモリーすら増設出来ない、自身でカスタマイズしたり修理したりが出来ないようになってしまいましたからね。(一部のiMacやMac miniをのぞく。ただし年々難易度高くなってます)Windowsではまだ組み立てパソコンのジャンルは健在です。
製品を無駄なく高性能にするにはソフトとハード両面を自社開発するほうが効率がいい
しかしコンピューターを高性能にしていくには、ハードウェアもソフトウェアもすべて統一して設計して作っていく方が効率的です。iPhoneなどを高性能化していくには自社開発で小さくてもより効率的なシステムをつくっていく必要がありました。
Appleはパソコンを作る楽しみを提供しているのではなく、そのコンピューターで何をするか?を重視した製品づくりをしているといえるでしょう。
AppleはiPhone4の時に自社チップを作ることにした
2010年AppleはiPad(初代)、iPhone4、iPod(4世代)で初めて、自社チップA4を搭載した製品を発売しました。
10年たって振り返ってみると、自社チップを作って搭載させるということは、自由な発想で自社製品を開発する上では必然的なことでした。これによりチップ性能の向上、製品の小型化などが出来、のちにそれはAppleWatchを生み出し、AirPodsなどの製品作りにいかされていきます。
Appleシリコンとは
Appleが設計開発させたSoCチップのことをAppleシリコンと呼んでいます。
SoC(システム・オン・チップ)って
Appleシリコンチップの特徴はSoC(システムオンチップ)といって、1つのチップの上にコンピュータが動く上で必要なさまざまな重要なシステムを司る部品が載っているのが特徴です。
マザーボード上にバラバラにのっていたシステムがたった1つのチップの上にまとまってのっている。
イメージでいうと、県とか国とかをまたいで重要部品をつくる専門工場がいくつもあって、そこでつくられた部品を時間と輸送コストをかけて別の工場にあつめてから製品を作っていたのを、一箇所の町の中に工場を集約させて輸送時間もコストも大幅削減したようなものです。
これにより製品(コンピューターでいうと作業結果でしょうか)作りそのものが早くなるのは理解しやすいと思います。この一箇所にまとめるということで、処理も早くなりますし、無駄な電力消費もなくなります。なによりも小さくまとまったので、製品の小型化ができます。
そして、Appleはさらにそれを進化させつづけて、より高性能な工場をより狭い敷地内に集約していっているのです。チップの小型化は処理能力の向上と省電力化の両方を高める技術にもなるのです。
それにより、iPhoneやiPadなどApple製品は驚異的に進化を進めていきました。
AppleシリコンはA4から始まった
2010年発売の初代iPadやiPhone4に搭載されたA4からAppleシリコンの歴史は始まっています。
製品搭載 Appleシリコン一覧<現行及び近年モデル>
製品 | Appleシリコン |
MacBookPro 14/16(late 2023) | M3 Pro/M3 Max |
iMac 24(2023) | M3 |
Mac Pro(2023) | M2 Ultra |
Mac Studio(2023) | M2 Pro/M2 Max |
Mac mini (2023) | M2/M2 Pro |
MacBookPro14/16(Early2023) | M2Pro/M2 Max |
MacBookAir(M2/2022) | M2 |
MacBookPro13(M2/2022) | M2 |
MacStudio | M1Max/M1Ultra |
MacBookPro14/16(2021) | M1Pro/M1 Max |
iMac24 | M1 |
MacBookAir(M1/2020) | M1 |
MacBookPro13(M1/2020) | M1 |
Mac mini (M1モデル) | M1 |
iPhone14Pro | A16 Bionic |
iPhone14 | A15 Bionic |
iPhone13/13Pro | A15 Bionic |
iPhoneSE(3rd) | A15 Bionic |
iPhone12/12Pro (mini/Maxを含む) | A14 Bionic |
iPhoneSE(2nd)/11 | A13 Bionic |
iPhoneXR | A12 Bionic |
iPadPro11(4th)/iPadPro12.9(6th) | M2 |
iPadPro11(3rd)/iPadPro12.9(5th) | M1 |
iPadPro11(2nd)/iPadPro12.9(4th) | A12Z Bionic |
iPadmini(6th) | A15 Bionic |
iPadAir(5th) | M1 |
iPadAir(4th) | A14 Bionic |
iPad(9th) | A13 Bionic |
iPad(8th)/iPad mini(5th) | A12 Bionic |
AppleWatchUltra | S8 |
AppleWatch8 | S8 |
AppleWatchSE(2nd) | S8 |
AppleWatch7 | S7 |
AppleWatch6 | S6 |
AppleWatchSE | S5 |
AppleWatch5 | S5 |
AppleWatch3 | S3 |
AppleTV 4K(3rd) | A15 Bionic |
AppleTV 4K(2nd) | A12 Bionic |
AppleTV 4K | A10X Fusion |
AppleTV HD | A8 |
HomePod(2nd) | S7 |
HomePod | A8 |
HomePod mini | S5 |
AirPods Max | H1 |
AirPods Pro(第2世代) | H2 |
AirPods Pro(第1世代) | H1 |
AirPods(第3世代) | H1 |
AirPods | H1 |
どのAppleシリコンが搭載されているかで、機種の性能などが推し量れます。
その為、新商品発表会の度に、新登場したAppleシリコンがどういった性能なのかを確認し、その後、ベンチマークなどを計測し、Appleの発表内容と照らし合わせたり、他社チップ搭載の製品と性能を比較したりしているのです。
必然的に、製品を説明する際にもこのAppleシリコンの名称が登場することがあります。初心者のお客様には戸惑われるので「A14チップがどうの〜」とかはあまり言いませんが、AppleコーナーにはApple好きなお客様も大勢来店されます。すると必然的に、「M1チップ搭載の〜」とか「A14チップが〜」とか、会話に頻繁に登場しがちです。
ですので、人気のiPhone、iPad、Mac系に使われているAppleシリコンについては、軽く抑えておきたいですね。
抑えておきたいAppleシリコン
Appleシリコン | サイズ | CPU | GPU | Neural Engine | トランジスタ | ユニファイド メモリ | メモリ 帯域幅 |
M3 Max | 3nm | 16 | 40 | 16 | 920億 | 36 (最大128GB) | |
M3 Pro | 3nm | 12 | 18 | 16 | 370億 | 18 (最大36GB) | |
M3 | 3nm | 8 | 10 | 16 | 250億 | 8 (最大24) | |
M2 Ultra | 5nm | 24 | 76 | 32 | 1340億 | 64 (最大192) | 最大400GB/s |
M2 Max | 5nm | 12 | 38 | 16 | 670億 | 32 (最大96) | 最大400GB/s |
M2 Pro | 5nm | 10 (12) | 16 (19) | 16 | 400億 | 16 (最大32) | 最大200GB/s |
M2 | 5nm | 8 | 10 | 16 | 200億 | 8 (最大24) | 最大100GB/s |
M1 Ultra | 5nm | 20 | 64 | 32 | 1140億 | 64 (最大128) | 最大800GB/s |
M1 Max | 5nm | 10 | 32 | 16 | 570億 | 32 (最大64) | 最大400GB/s |
M1 Pro | 5nm | 10 | 16 | 16 | 337億 | 16 (最大32) | 最大200GB/s |
M1 | 5nm | 8 | 8 | 16 | 160億 | 8 (最大16) | |
A17 Pro | 3nm | 6 | 6 | 16 | 190億 | 8 | |
A16 Bionic | 4nm(?) N5強化版 | 6 | 5 | 16 | 160億 | – | |
A15 Bionic | 5nm | 6 | 5/4※1 | 16 | 150億 | – | |
A14 Bionic | 5nm | 6 | 4 | 16 | 118億 | – | |
A12Z Bionic | 7nm | 8 | 8 | 8 | 100億 | – | |
A13 Bionic | 7nm | 6 | 4 | 8 | 85億 | – | |
A12 Bionic | 7nm | 6 | 4 | 8 | 69億 | – |
今回のM1チップはCPUが8コア、GPUが8コア、Neural Engineが16コアでメモリまでチップに搭載してきました。必要なものは全部まとめてって感じです。メモリまでチップに搭載されたのはM1チップが初めてです。
2021年秋にはM1シリーズのより高性能なチップM1ProとM1Maxが発表されました。
2022年3月にはM1Ultra搭載のMacStudioも登場。M1シリーズのラインナップがどんどん進化しています。
2022年6月にはM2チップが登場。
2023年2月に、M2ProとM2Maxが搭載されたMacBookProなどが発売されました。
※1. A15 BionicはiPhone13ProとiPadmini6には5コアGPUのものが使用され、iPhone13には4コアGPUのものが使用されています。
M1とIntelの違いから来るソフトウェアの課題
AppleシリコンとIntelのCPUでは、実はプログラムを動かす言語が違います。
その為、Appleシリコンで動く言語でつくられたアプリを、ネット上ではネイティブ。またAppleシリコンでもIntelでも動くよう作られたアプリをハイブリッドと言ったりもしています。またネイティブとよばれるアプリにはこのハイブリッドも含まれています。
この2つのチップは言語が違う為、通常Intel用の言語で作られたアプリはAppleシリコン上で動きません。そのため、Appleはそれを解決するために1つの手段を用意しました。
言語を翻訳する「Rosetta2」
今回Appleは、Intel版アプリを互換エミュレーター(翻訳する)する機能として「Rosetta2」を用意しました。Mac用のすべてのアプリがすぐにM1チップに対応できないだろうと考え、その繋ぎとして考えられた機能です。
それによってIntel版のアプリがネイティブ化が終わっていなくても、とりあえずM1のMacで動くのです。エミュレートをかけて使用しているので、ネイティブよりは遅くなると言われていますが、発売後の反応としては十分な速度で使えているという反響でした。
エミュレートしてこの反応であれば、ネイティブ化がこれからどんどん進んでいった時には、どれだけの反応速度になるか楽しみだといった感想が聞こえています。
2022年5月現在、AppleではM1系MacがMacProを除く全てのモデルで置き換えが進みました。
アプリの対応もほぼほぼM1系に置き換わっています。
ブートキャンプは使えないWindowsアプリも使えない(一部改善)
Intel版Mac用のソフトはほぼほぼ問題なく、使えているという報告が続く中、現在Intel版に出来てM1版に出来ないこととして「WindowsをMacパソコンに入れてつかうブートキャンプが使えない。仮想ソフトでMac上にWindowsを置いてつかうパラレルデスクトップも使えない。(2022年8月にWindows11ARM版が公式に発売され、これによりパラレルデスクトップ上でWindows11ARM版を動かせるようになりました。ただ、ARM版のため、対応していないソフトもあります。)」ことです。
これは、M1のアーキテクチャであるARM版Windowsが市販されていない為です。ARM版のWindowsが単体で販売されれば、M1搭載MacでもWindowsが使えるという事になりますが、それを認めるかどうかはMicrosoft側の判断に委ねられています。
また、以前とちがいMacを使う環境も随分整ってきており、Macの筐体にわざわざWindowsを入れてまでWindowsにこだわる必要があるのか?といった意見も増えてきています。
M1搭載Macの登場でパソコン業界の勢力図が変わってくる可能性が高まってきています。
さて、WindowsOSを搭載しなければ、Windows版アプリが使えないのか?といったところですが、こちらには希望の光が差し込んでいます。Windows版アプリを動作させるソフトウェアの開発が進んでいます。
この辺りも将来的に使用できる方法が出てくるかもしれません。あくまでも今後ではあります。
M1チップに置き換えたことでの恩恵
MacをAppleシリコンに置き換えたことで、iPhoneやiPadとの連携、また周辺アクセサリなどの連動が進んでいます。
デバイス間でのデータのやり取りもよりシームレスに、安定して行えるようになっています。
今後はアプリの融合も進んでいくものと思われます。
まとめ
AppleシリコンとはAppleが独自で設計し自社の製品に組み込んでいるSoCチップのことです。
今回AppleはMac用AppleシリコンであるM1をMac3機種に搭載して発売しました。
驚異的な性能で、パソコン市場の勢力図を塗り替えてしまうかもしれません。
現在はIntel用Macで使えていたアプリは、エミュレーターの「Rosetta2」を使用してほぼほぼ問題なく使えており、M1用にエミュレート不要なネイティブアプリもどんどん発表されています。
Windowsのブートキャンプでの使用等は今のところ出来ませんが、互換レイヤーソフト「CrossOver20」の使用でWindowsアプリが使えたとの嬉しい報告も出ています。(ただしBigSur11.1ベータ版上でとのことなので、実際にはもう少し先になりそうです。)
M1チップなどの詳細についてはまた別の記事でご紹介したいと思いますが、Appleシリコンというものがどういうものか?ということはご理解いただけましたでしょうか。
また、現場から質問が出ましたら記事にまとめたいと思います。
M1 Macではプログラム言語が違う為、Mac用のソフトもIntel MacでもM1 Macでも使えるユニバーサルアプリに修正するか、ロゼッタ2を使って翻訳して使うかということになりますが、M1 Macで使えるアプリ、有名どころを紹介する海外サイトが便利だとツイッターでも話題となっています。「Is Apple silicon ready?」